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JCDAジャーナル

2016年大会特別版 第1号

高等学校での就職支援:CDA取得後の生徒や先生へのアプローチの変化

2016年08月09日 18:33 by jcda-journal
波多江 敏弘さん(九州・沖縄支部)

本校に勤務し始めた時から現在まで思い続けていることがある。「巣立っていく生徒一人ひとりが、将来、幸せな人生を送って欲しい」ということだ。

教職について28年目、本校に勤めて25年目となった。この間、担任、部活動の顧問、授業担当者として多くの生徒に携わってきた。はたして、どれだけの生徒に対して有益な指導や助言ができたのだろうか。
私は、工業科に所属し、主に電気科で担任や教科指導をおこなってきた。現在は、担任をしていないが、数年前までは、クラスの生徒が進路を実現させることを目標に、全力で携わる毎日を送ってきた。
3年生の担任ともなれば、その1年間は進路指導が中心の毎日である。もちろん、3年生になってから進路指導を始めるのではなく、1年生の時から卒業後を見据えた進路指導をおこなってきた。工業科の3年生は、7~8割以上が就職を希望する。そのため、求人票の見方や履歴書の書き方を教え、筆記試験や面接対策など、生徒ともども忙しい毎日を送った。また、生徒にはこれらの指導や助言が、「社会に出てから一生をとおして必要な知識や心構えになる」、と指導してきた。

進路を決める際は三者面談を実施し、生徒・保護者の希望や意見を尊重して話を進めていく。はっきりと希望や自分の考えを言える生徒には、指導や助言がしやすいが、そうでない生徒には、なかば強引に進路の道筋を紹介し指導する場面もあった。
生徒は、3月1日に卒業し、4月から社会人として就業する。多くの生徒は、頑張って就業しているが、残念ながらたまに、会社から研修期間や数か月後に退職をしたなどの連絡を受けることがある。一人でもこのような連絡を受けると、私の指導で、「何が間違っていたのか?」、「生徒と会社のどこがミス・マッチングだったのか?」など自責の念に駆られた。

さて、本校は、福岡県太宰府市にある私立の全日制高等学校で創立59年を迎える。現在は、普通科、総合学科、商業科、工業科(電気・電子機械・建築・自動車)を有し、約1700名が在籍する総合学園である。創立当初は、工業高校として、ものづくり立国である日本に貢献する人材育成を目的としていた。しかし、時代が昭和から平成に移り、時代の加速が進むにつれ、就職一辺倒だった進路状況が、大学・短大、専門学校をはじめとする上級学校への進学志向と変わっていった。二十数年前まで8割以上の就職希望は現在、進学希望が7割、就職希望が3割と逆転している。このように、時代の変化やニーズにあわせ、本校も変革を成し遂げてきた。

4年前、進路指導部内の就職係長として、就職を希望する生徒の指導や担任に助言をすることとなった。就職希望者はたかが3割といっても、本校では毎年100名以上になる。しかも希望する職種は製造業をはじめとして現業職、事務や介護・接客・サービス業などを含め多種多様である。多種多様

進路指導をするうえで直接、生徒に携わるのは担任である。担任が、限られた時間を使って「一人ひとりの生徒とコミュニケーションを図り、信頼関係を構築」することが、納得できる進路実現に向けての一番のポイントになる。そのために私は、担任が生徒と円滑なコミュニケーションと的確な指導ができるようにと、情報やスキルを中心に提供してきた。

就職係長として一年が過ぎ、これから就職希望者の進路実現のために新たな取り組みを考えていた矢先、進路指導部部長としての任を受けた。部長として就職希望者に限らず、進学希望者やキャリア教育など進路全般の仕事に携わることとなった。
生徒・保護者の多種多様な進路のニーズに伴い、これまでの「出口」に重点を置く進路指導から、一歩前進した進路指導を求めるため、「業務内容の見直し」が必要と考えた。生徒の5年後、10年後の人生を見据えた、いわゆる、キャリア教育が進路指導における大きな流れだと位置付けた。すなわち、キャリア教育を柱とした指導計画をたて、実施していくことが今後の進路指導のあり方と結論づけたのである。

当時、専門学校に勤務していた友人にキャリア教育を推進するための手立てを相談した。その際、CDAという資格があることを知り、Webや資格取得者を通じて情報を集めた。
CDAの資格が、キャリア教育に直結している訳ではない。しかし、良質な就職支援と根拠を持ってキャリア教育を推進していくために、資格取得が進路指導の取り組みとして大きく前進すると考えたのだ。

現在、進路指導部の取り組みとして、重点を置いているのは、生徒の「PDCAサイクルの習慣化」である。何事にも"計画”→"実施”→"振り返り”→"改善”としていく姿勢と習慣が、生徒の一生に大きく左右すると考えるためだ。その実現の一つの取り組みとして、「生徒手帳」を改善した。どこの学校にもない本校独自の完全オリジナルの手帳である。手帳は、①校則、②月・週・一日のスケジュール、③学校での様々な取り組みを記入するキャリアノートの三部構成にした。キャリア

この手帳を十分に活用できるようになれば、本校におけるキャリア教育の取り組みは大きく前進できると考えている。進学にしても、就職にしても、希望先の受験日は、ある程度決められている。だからこそ、受験日から逆算し早期に準備をしていかなければならない。また、面接試験は、将来を問われる質問よりも、過去を問われる質問の比率が高い。進学しても将来は、就業しなくてはならない。就職活動の際に、見通しが立たないといった目標を見失ったときに、高校生活でどのような事柄に心が動かされたか、手帳によって当時を振り返ることができる。

CDA取得後の生徒や先生へのアプローチの変化
資格取得後、キャリア教育を推進する一方で、私自身が生徒や先生方に対するアプローチの姿勢が変化したと自覚している。日ごろから、生徒や先生方との会話の中で、進路指導や就職に関する質問や疑問を投げかけられる。以前は、生徒や先生方に対して白黒を付けたり、あたかもこの考えしかないような口調で回答をしていた。しかし現在では、生徒や先生方の質問・疑問を持つに至った経緯や考えを尊重し、傾聴を心掛け、そして質問者が自身で回答を見つけるような問い掛けをしている。
また、多くの教育関係業者が来校し、業者からキャリア教育に関するテキストやキャリアノートの見本、アセスメントツールの説明を受ける。いままでは、業者の話に関心を示す程度であったが、業者が提示するテキスト等の根底には、養成講座で学んだキャリアの心理学者達の理論が裏打ちされていることがわかるようになった。

CDAとしてキャリア教育に携わる
CDAはキャリア・コンサルタントであるが、それ以上にキャリア・カウンセラーの意味合いが強い。CDAを取得する際に一番強く学んだことは、クライエントの話を十分に聴くことであった。クライエント(ここではもちろん生徒や先生方が対象である)に有意義なコンサルティングをするためには、カウンセラーとして話を聴くことが最重要である。カウンセラーとしての私の傾聴や問い掛けの経験は、まだまだ不十分である。しかし、以前のような説得や理解させることに力点を置いた指導をしていたときに比べ、クライエントとのセッション(面談)を繰り返すうちに、クライエントが素直に応対する姿や、本音で話をしていることを実感できるようになった。

「進路実現」という目的のハードルを越えるのは生徒であり、ハードルの超え方をアドバイスするのは、先生である。考えも思いも問い掛けもしなかったことが、今では生徒との面談の中で「何をきっかけにそう考えるようになったか?」「生徒が本当にそのハードルを越えたいのか?」「どの高さまでなら越えられるのか?」「超えるためにはどうすればよいのか?」「超えるための不安はないのか?」「超えた後、次のハードルのことは考えているのか?」、など様々な声を聴くことを心掛けている。生徒の真の声や、生徒が表現できない声を導き出してからこそ、進路実現に向けての一歩が始まると確信している。ハードル、成長

経験が浅い先生方に対しても同様のスタンスで対応している。
私に質問や相談があった際は、「悩んでいる生徒の本音(主訴)を掴んでいますか?」「先生は、解決を急ぎすぎではありませんか?」などと、逆に質問を投げ返すようにしている。また、「進路の勉強不足で上手く指導できません。先生の方で生徒の話を聞いてもらえませんか?」などの相談があった際は、「まずは、あなたが生徒の話に耳を傾けないと駄目!信頼関係を構築するために、生徒の話に耳を傾けてください。」「先生は、進路実現のために必要な事柄を教えすぎないように注意して!まずは生徒に調べ方だけを教えてあげてください。」などと助言している。

もちろん、教育活動をおこなう上で理解させ、説得することも重要である。生徒は、社会の構図やシステムがわからないのである。生徒は、働くこと、仕事をすることの意味、労働条件など学んでおかなければならないことがたくさんある。しかし残念なことに、これらを学ぶための授業はおろか、教科書すらない。特別活動やキャリア教育の一環としての進路ガイダンスやインターンシップなどの行事を実施し、これらの体験を通して、職業観や就業観などを学んでいく。
しかし、生徒側に「やらされ感」が強ければ、これらの取り組みも何の意味もなさない。そうならないために、日ごろの教育活動の中で、社会人となるために最低限必要な知識や心構えは指導しておく必要があるのだ。生徒は「進路実現」のために、毎日の学校生活で基本的な生活習慣を身につけ、自分の考えや意見をきちんと表現し、人の意見に耳を傾ける力を養わなければならない。

最後に、「貴校のキャリア教育とは何か?」と問われたら、私の答えは、「毎日の学校生活を大切にし、入学した日から卒業する日までの教育活動のこと。」である。

プロフィール
筆者:波多江 敏弘
活動場所:学校法人 筑紫台学園 筑紫台高等学校
活動領域:高校支援(進路指導、キャリア教育推進)
活動歴:CDAを取得して2年目、本校に勤務25年目(教員歴28年目)

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