筆者は現在、本業の傍ら、各種専門家が、専門知識を生かした記事を提供するウェブメディアである「シェアーズカフェ・オンライン(以下「SCOL」)」の書き手を務めています。専門家集団において「CDA(キャリアコンサルタント)」として複数の署名記事を執筆している経験から、CDAに求められる「情報発信力」について論考したいと思います。筆者が提供している記事は「専門家が独自の視点から発信する第3報」にカテゴライズされると考えています。
ビジネス系のウェブサイトとしてはナンバー1の東洋経済オンラインが掲げるポリシーが「クオリティの高い第2報」です。第1報の記事(新聞社やテレビ局)はどんな事件がおきたのかすぐに伝える事が目的でスピードが重視されます。それに対して第2報の記事は、多少記事の提供が遅くても、新聞には無い分析・視点・ストーリーを加えて提供すれば、他社とは異なる価値を提供できる、と考えられています。SCOLは記事の鮮度で勝負するのではなく、士業や大学教授など様々な業界の専門家が、専門知識を生かして自らの意見・オピニオンや分析を披露する……これが「専門家(実務家・学識経験者)が独自の視点から提供する第3報」です。速報性や文章の上手さで記者と勝負する事は出来ませんが、外部から取材した記者の目線ではなく、日々実務に取り組む、あるいは日々研究に打ち込む専門家の視点は記者とはまた異なる価値を生む事が出来るはずです(「SCOLウェブサイト」から抜粋。一部筆者改)。筆者が実感している「CDAが情報発信するメリット」は以下の2点です。
第1には、CDAの地位向上です。筆者がかつて研修の企画を担当していた際、講師の選定に苦慮した経験がありますが、人事担当部門においても、CDA(キャリアコンサルタント)とは何者か、はっきり認知されているとは言い難い現状にありました。いわんや各現場の管理・監督者や社員においては、「何か転職の相談に乗ってくれる人なのかなあ」程度の知識であると思われます。筆者の記事は「CDA(キャリアコンサルタント)」の名称と共に、ヤフーニュースなど大手のサイトにも転載され、多くの読者の目に触れています。CDAが専門的な見地から価値ある記事を提供することで、自身の社会的な地位や認知度の向上に寄与できるのではなかろうか、と考えます。
第2には、CDAの業務・職域の拡大です。筆者はあくまで無償の書き手というスタンスですが、他の書き手の多くは独立事業主であり、記事の掲載がきっかけで各種メディアの取材など、新たな仕事につながることも多いそうです。実際に筆者も「所沢市の育休取得で保育園退園問題」(http://www.huffingtonpost.jp/sharescafe-online/preschool-tokorozawa_b_7633180.html)について寄稿した際に、某テレビ局から取材の申し入れがありました(時間の関係上実現はしませんでしたが)。多くのメディアは面白いコンテンツを探すべくアンテナを張っており、積極的な情報発信を行うことで、CDAとしての業務拡大につながることが期待できます。
もちろん、未熟な筆者では気づいていないメリットも多々あろうかと思います。出勤時にスマホでヤフーニュース等を閲覧していて、自分の記事が目に触れるのは、なんとも不思議な気持ちがするとともに、自分の主張や考えを多くの人々に届けることができるWEBサイトというシステムに、ただただ驚愕するばかりです。一昔前であれば、自分の著書を持つとか、相当の著名人でもなければ、自身の意見を不特定多数に発信することすらできなかったでしょう。技術の進歩に驚くとともに、当該進歩についていかねばならないと考えています。
一方、不特定多数の読者の目に触れる記事を、実名を晒して発信することには面白さと同時に怖さもあります。かつてタレントのベッキーさん不倫疑惑へのバッシングに対しての記事を寄稿した際には、2ちゃんねる等で実名を挙げて非難される経験もしました。ヤフーニュースに転載された同記事には1000件を超えるコメントが付され、人格攻撃的な内容も多くみられました(むろん、賛同してくれる方も多くおり、あの「ホリエモン」に記事内容をリツイートされる、というなかなかできない経験もしました←プチ自慢です)。インターネットの世界は匿名性が高く、論調も攻撃的になりがちです。昨今は、ターゲットにされた人の住所や職場、顔写真などを「晒す」リンチのような行為も横行しています。バッシングにも耐えうる精神力と内容の正確さ・緻密さは常に持ち合わせるよう、緊張感を持って執筆に臨んでいます。署名記事を書く以上、わが子に対する批判には毅然とした対応が取れるよう備える必要があると思います。
記事の執筆にはファクト(事実)を捉え、エビデンス(論拠)を押さえながら、読者に価値あるものを提供する必要があります(師匠である編集長に口酸っぱく教示を受けています)。一方、書き手としての「情熱」も肝要です。これらのバランスが難しく、ややもすれば、独りよがりの記事になってしまいがちです。カウンセリングにおいても、カウンセラーの自己満足で完結することは許されず、クライエントに「価値」をいかに提供できるか、客観的なファクトとエビデンスに立脚したカウンセリングが求められることと同様だと思います。決して慢心せず、どれだけ社会に価値のある記事を提供できるかが肝だといえるでしょう。
以上、とりとめのない文章となってしまいましたが、様々なメディアでの情報発信力は、今後のCDAには必須の能力であると筆者は考えます。特に、昨今は各領域・各業界に専門家が溢れています。多くの専門家の中でCDAである私(あなた)が選ばれるにはどうしたらいいのか。そのヒントが、「情報発信」という行為に散りばまられているような気がしてなりません。
最後にご参考まで、SCOLでは現在も書き手を募集しているようですので、ご紹介します。ご興味のおありのCDAの方は、アクションを起こしてみてはいかがでしょうか(私のほかにも、CDA資格者の書き手がいるようです)。また、筆者の執筆記事一覧を併せてお示ししますので、ご笑覧いただければ幸いです。
【筆者の執筆記事一覧(平成28年8月現在)】http://sharescafe.net/author/gotokazu
プロフィール
筆者:後藤 和也
活動場所:PCの前であればどこでも(専ら職場の昼休みや出退勤の電車の中など)。
活動領域:ビジネスパーソンへの情報提供、WEBライティング、社会人教育
活動歴:2015年2月から
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