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JCDAジャーナル

2016年大会特別版 第5号

ドリームマップ授業による体系的かつ継続的な「キャリア教育」の実現に向けて

2016年08月26日 15:00 by jcda-journal
2016年08月26日 15:00 by jcda-journal
前田 佳視さん(西関東支部)

■現在のキャリア教育について思うこと
現在、大学にて大学生の就職支援に携わっています。
大学3年生の夏休み前あたりから、インターンシップ参加希望者によるエントリーシートの添削依頼が、大学4年生の就職相談とあわせて増えてきます。就職活動におけるエントリーシート同様、インターンシップにおけるエントリーシートにも「インターンシップに参加したい理由」と「学生時代に力を入れて取り組んだこと」などの質問が含まれています。このエントリーシート作成をきっかけに、学生は"働くこと”や"仕事”について現実的に向き合い考え始めるように思います。
しかし、以前と比べるとインターンシップ導入企業数もインターンシップへの参加学生数も増えてはいるものの、まだまだ多くの学生は就職活動という時期を迎えてから "就職” や"仕事”について考え始めるのが現状です。大学2年次から、大学1年次から、いやもっと早い時期から、"いつか必ず訪れる社会に出る時のこと”を意識して目的・目標をもってアンテナを立てて、日々の学業や部活動、ボランティア活動、アルバイトなどに取り組めていたら将来への選択肢も広がったのではと思い、キャリアに関する早期のアプローチの必要性を日々感じています。

早期のアプローチとしては、大学をはじめ、今では高校・中学校・小学校でも学校が取り組むべきものとして「キャリア教育」が位置づけされ、職場訪問や職業体験、職業人講話などが「キャリア教育」として実施されています。しかし、いつか必ず訪れる就職という時期に、現在の「キャリア教育」がどうような効果をもたらしているのかと考えた時、そこにキャリア教育の現状における課題を感じます。

現在は大学での就職支援に携わる傍ら、今回ご報告させていただく、小中学校などで実施されているキャリア教育「ドリームマップ授業」の普及活動に携わっています。各小中学校などで「ドリームマップ授業」が実施されることで、現在、取り組まれている「キャリア教育」に対する効果をより高めることができると感じています。maeda2


■「ドリームマップ授業」普及活動に関わったきっかけ
私は約20年にわたりIT企業などで人事や教育・採用業務等を経験してきました。常に"社員ひとりひとりがそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境(制度)”と"個人のより良いライフ・キャリア形成”を自分の課題として取り組んできました。そして新卒採用から若手社員教育までの業務に携わるなかで、一企業の枠を超えて入社・就職前の段階から中長期的な個人のキャリア形成に関わっていけたらと強く思うようになり、若年者就労支援に携わるようになりました。

若年者就労支援時に「就職したいけどやりたいことがない」「働きたいけど働くことに自信がない」と相談にやってくる若年者に対して、個別カウンセリングにて自己分析を行いながら、別の有効なアプローチ方法はないかと模索するようになりました。
そして、若年者層に対して将来を前向きに捉え、就職や仕事に主体的に取り組むためのきっかけを何か提供できないかと試行錯誤するなか、就職準備のためのワークショップ事例のひとつから「ドリームマップ」という目標達成ツールを知り、その自分の将来を考え描くための楽しいアプローチ方法やねらい・効果に共感し、活動へ参加を決めました。

■なぜキャリア教育として「ドリームマップ授業」なのか?
まず「ドリームマップ」とは、将来なりたい自分の姿ややりたい仕事を、台紙の上に写真・雑誌の切り抜きや文字で表す自己実現のための目標達成ツールです。そして、この「ドリームマップ」を活用したキャリア教育授業が「ドリームマップ授業」です。

「ドリームマップ」は、一般社団法人ドリームマップ普及協会の代表理事である秋田稲美さんが2002年に発案し、平成16年度から平成18年度には経済産業省の企業家教育促進事業として「ドリームマップ授業」が採択され、それ以降10年以上にわたって、主体的に生きる力を育むキャリア教育授業として実績を積み重ね、平成27年度には実施校が192校となっています。同協会では、キャリア教育「ドリームマップ授業」の導入を各学校に働きかけ、各学校において授業導入が決まれば学校との打ち合わせを行い、協会認定「ドリマ先生」が各学校に出向いて「ドリームマップ授業」を行います。

キャリア教育「ドリームマップ授業」では、「夢(ビジョン)を描く力」「夢(ビジョン)を信じる力」「夢(ビジョン)を伝える力」を育むことを主な目的としています。一時間目から六時間目まで丸一日かけて行う授業では、肯定的な自己分析を行い、将来なりたい自分像をドリームマップに描き、発表することで周囲からの受容を得て、日々への行動へとつなげていきます。maeda1

基本的な授業の流れとしては、まず1時間目は、自由な発想を促す環境作りを行いながら、夢(ビジョン)を持つことの大切さや夢(ビジョン)をかなえるための法則、夢(ビジョン)の描き方を伝えていきます。
2時間目では、自分について知り、視点を変えてみることをアプローチしながら、自己受容、他者受容を促し、自己肯定感や自己効力感を高めたうえで、何のためにどんなことをやりたいか、自分の将来について多角的に考えていきます。
そして、3・4時間目で、事前に用意した写真・雑誌の切り抜きを貼り、言葉を書き添えながら「将来なりたい自分の姿」をより具体的により明確にドリームマップに表現していきます。
最後5・6時間目では、全員がドリームマップを発表し、自分の夢(ビジョン)を伝え、夢(ビジョン)を共有し応援しあうことの大切さを体験していきます。そして、夢(ビジョン)に向かう具体的な行動についても考え、発展的継続性を促していきます。

1時間目には「夢なんてない」「わからない」とつまらなそうな態度や反抗的な態度をとっていた子どもが、少しずつ少しずつドリームマップに自分の夢を描き、6時間目にはクラス全員の前で発表します。将来のことを考える機会がなかったから自分の夢に気づいていなかった子供が、自分の夢を持っていたけど自分には無理と決めつけていた子どもが、ドリームマップ授業を通して自分と向き合う時間をもつことで変化していく姿を目のあたりにします。
maeda3ドリームマップ授業の1日は、子ども達の自己理解を深め自己肯定感を高めながら、こども達に「自分の夢(ビジョン)を描いてみる」経験と「夢(ビジョン)に向かう勇気を得る」機会を与えるとともに、日々の主体的な行動、そして自らの意思で人生を切り開いて生きていく力を育むきっかけの一つとなっていることを毎回実感します。

また、ドリームマップを描く際には、自己(物質的なこと)、自己(精神的なこと)、他者への貢献、社会への貢献の「4つの視点」で描くことにより、就労観や職業観を育む機会にもなっていると考えます。

キャリア教育「ドリームマップ授業」は、生涯にわたり自己キャリア形成の基盤となる「自己肯定感」「人生就労観」「自律的行動」への気づきやきっかけの提供とともに、あわせて他者貢献および社会貢献の視点をも提供できると考えます。

■「ドリームマップ授業」の普及活動を通して
これからも、自己肯定感を高め、将来について具体的に考え、自ら考えて動ける力をつけるきっかけとなる「ドリームマップ授業」を、もっともっと多くの子ども達に、日本全国の小中学校の子ども達に届けたいと考えています。
現在、「ドリームマップ授業」導入については、授業時間数や費用、教員への負担などが問題となり、導入実施に至らない場合も多々ありますが、導入実施校については翌年度もリピート校になっているという実績も多く、これからも1校1校に「ドリームマップ授業」を伝え届けていく活動を続けていくことで、その効果の高さとともに日本全国の小中学校に広がっていくと確信しています。
そして、さらなる「ドリームマップ授業」の普及を通して、「ドリームマップ授業」をベースとしたキャリア教育の必修科目化を実現したいと考えています。

■ドリームマップ授業による体系的かつ継続的な「キャリア教育」実現に向けて
現在、高校・中学校で「キャリア教育」として実施されている職場訪問や職業体験、職業人講話などの貴重な体験学習の機会を活かし「キャリア教育」としての効果を高めるためには、「ドリームマップ授業」による、現在の自分を知り、将来何になりたいかを考え、自分の将来において習得したい知識・スキルはもちろん、やりたいことや経験しておきたいことなどなりたい将来の自分のために「もっと育んでおきたいもの」を明確にし、日々の学習や行動へとつなげていく取り組みが必要不可欠であると考えます。
また、各年代のキャリアの発達段階にあわせた「キャリア教育」としての学習や体験を繰り返し実施していくことも必要であると考えます。

CDAとしてこれからは、学校および企業・地域と連携を取りながら、ドリームマップ授業をベースとした「キャリア教育」を体系的に組み立て、小学校・中学校、そして高校において継続的に「キャリア教育」を実施していく役割を担うべきだと考えています。そして、こども達が自信と希望をもって、いつか必ず訪れる社会への一歩を笑顔で踏み出せるように、ドリームマップ授業による体系的かつ継続的な「キャリア教育」の実現に向けて取り組んでいきたいと思います。

プロフィール
筆者 前田 佳視
活動場所 全国の小中学校にて
活動領域 小中学生のキャリア教育支援
活動歴

2011年にドリームマップファシリテーターを取得
その後、認定ドリマ先生として、関東を中心とした各小中学校にてドリームマップ授業を実施

コメント

現在、大学にて大学生の就職支援に携わるかたはら、小中学校に出向き、キャリア教育「ドリームマップ授業」の普及活動を行っています


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