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JCDAジャーナル

2014年11月号 No.53

【JCDA創立15周年記念特集(最終回)】経験代謝における自己概念の成長~1/2

2016年12月15日 16:01 by jcda-journal

キャリアカウンセリングの基本構造について理解し、CDAが担っているキャリアカウンセラーの「役割」について、皆さんお一人おひとりに考えて頂きたいと思います。

社会とのつながり
―「経験」を糧とする支援とは JCDA理事長 立野 了嗣

ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、私はジャーナル50 号の15 周年記念特集号で慶應義塾大学の樋口美雄先生と対談させて頂きました。樋口先生は計量経済学がご専門で、労働政策審議会の座長も務めていらっしゃいます。CDAの皆さんには、労働政策や社会動向の変化、もっというと、環境や社会の変化について関心を持って頂きたいと思っています。

環境や社会の変化とキャリアカウンセリングがどうして関係があるのでしょうか。
昨年末に産業競争力会議が発表した報告書には、「キャリアコンサルタント」という言葉が散見されます。報告書をお読み頂くと、労働経済学的な内容が多く書かれています。
したがって、厚生労働省が社会問題の解決にあたって労働政策を考える際に、労働経済学的な観点で課題を設定し、その課題に対してどのような専門性が必要なのか検討するのではないでしょうか。その中からキャリアコンサルタントの必要性が求められているのかもしれません。
このようなキャリアカウンセリングのニーズのもと になるものに、CDAの皆さんにもアンテナを立てて頂きたいと思います。

皆さんには2009 年から「経験代謝」について色々な形でお伝えしておりますが、「経験代謝」という言葉は、発案当初は「環境代謝」と言っておりました。なぜ「環境」という言葉を使おうと思ったのかというと、「環境」という言葉が自分以外の世界全体を指す言葉ではないかと思ったからです。「環境」はその人の周囲にある机や椅子も指しますし、その人を取り巻く周囲の人間も指しますし、世の中全部を指すとも言えます。ここでいう「環境」を、「社会」と言い換えてもいいかもしれません。

私は「人と社会」のつながりというテーマにおいて、人がその環境の中で自分の存在をどのように認識するか、また、その環境における自分の位置をどのように確認するかといった観点で「環境代謝」ということをずっと考えてきました。色々と検討した結果、キャリアカウンセリングの分野では「経験代謝」という名称がよりフィットするだろうということで最終的には今日発表している「経験代謝」に落ち着きました。

私自身は「人と社会」についてそのようなことを考えていたわけですが、キャリアの世界では同じように環境という観点でキャリアカウンセリングの必要性を唱えている専門家が何人かいらっしゃいます。たとえば、サニー・ハンセン博士は、キャリアカウンセラーの役割を、人と社会の間を橋渡しする、人と社会の間に立つという意味で、「チェンジ・エージェント」と表現されました。ハンセン博士がキャリアカウンセラーの役割を「人と社会の間に立つ」という観点で捉えられたというのは興味深く、社会と個人の関係をどう考えるのかについて、私自身色々と考えることがあります。CDAの皆さんも改めてキャリアカウンセラーの「役割」についてもう一度考えてみられてはいかがでしょうか。経験を見る

また、マーク・サビカス博士は、社会構成主義的な観点でキャリア構築理論を提唱されました。サビカス博士の理論については2012年に改訂された新しい「キャリアカウンセラー養成講座」のテキスト3に掲載されていますし、ジャーナル本号でもサビカス博士のキャリア構築理論の論文を掲載しておりますのでご参照ください。

サビカス博士は、「一国の文化は個人のキャリア形成の背景要因として働く」と仰っています。ハンセン博士と表現は異なりますが、サビカス博士もまた、環境の変化や、人と社会の関係性について考えておられるわけです。

このような表現で示されるサビカス博士のキャリア観を見て私は、「時代の子」という言葉が浮かびます。この表現はあまりよくないニュアンスを持っております。たとえば「結局フロイトも時代の子だった」や「結局、マルクスも時代の子だった」といった表現です。色々な哲人や学者や芸術家がいるわけですが、それら傑出した人物の功績も、「時代」というものに、その理論や芸術性が色づけされているという感じでしょうか。どのような文脈の中でサビカス博士が「一国の文化は・・・・・」を使っていらっしゃるのか大変興味深いところです。

環境の変化といった観点でもうひとり思い出すのが、CDAの生みの母である、ジョアン・ハリス・ボールズビー博士です。ボールズビー博士がある研修の中で言っておられたのですが、「環境変化には順応するしかないと思っている人には、カウンセリングのベルトが架からない」という言葉が印象に残っています。
私の中では多少異論があるのですが、ひとつの観点として考えていくべきことだと思いました。先述のふたりの専門家とはまた違った観点での「環境」の捉え方で、それぞれの論点が違うわけですが、各自が考える社会経済の動向を捉える視点の違いが面白いと思います。

「キャリアカウンセリングとは何か」の第1章~第3章で、これまでずっと「経験代謝」について皆さんにご紹介してきて、2014 年からはCDA認定試験の試験要項にも「経験代謝」が入りました。「経験代謝」の一連のサイクルでは、クライエントの経験の再現を促し、自己概念の影を手がかりに意味の出現を促し、自分らしさ、肯定的な自己概念にたどり着き、それを軸にしながら意味の実現として経験を創っていくことだとお伝えしてきました。経験代謝サイクル

それは人間性として誰しも持っている「経験から学ぶ」というメカニズムです。CDAとしては、「経験代謝」の中で社会経済動向の認識をどのように考えるかということです。私自身もまだこうだと断言できるわけではないのですが、2つほど考えてみたいと思うことがあります。
1つは、そのクライエントが置かれている状況という観点での社会経済動向の認識です。これはある意味で常識ともいえると思います。もう1つは、少しわかりづらいかもしれませんが、そのクライエントにとってCDAの存在が「経験」から学ぶ際の手助けになるということです。

「経験代謝」の図で示している「人」と「経験」のうち、そのクライエントが経験したことを「経験」だと言っているわけですが、その「経験」が「CDAが解り易く噛み砕いた経験」だと考えて頂ければいいかもしれません。キャリアカウンセリングの中では、そのクライエントにとって、「経験」になるような役割をCDAが担っているのではないかということです。

私が何と比較してこのようなお話をしているかというと、カール・ロジャーズが「クライエント中心療法」(ロジャース全集2)で展開しているカウンセラー像とCDAを比較して考えています。ロジャーズのあるクライエントは、ロジャーズのことを指して「先生は空気みたいだ」と言っています。先生はそこにいるけれどもそこにいないような感じがしたというクライエントの感想がありました。

ロジャーズはそのような存在であることを心がけてクライエントに接しているのかもしれません。

ロジャーズはカウンセリングにおける信頼関係の構築の条件として、「受容・共感・一致」と言っており、そのようにクライエントに接することは私も大変重要だと思っています。
「クライエント中心療法」と「経験代謝」は大変近いと私は考えているのですが、カウンセラーの役割という観点でいうと、ロジャーズとは考え方が少し異なるのかもしれないとも思うことがあります。

「経験代謝」ではCDAが「問いかけ」を通して、クライエントの「経験」をCDAが噛み砕いた情報としてクライエントに呈示する役割があるのではないかという気がします。情報を呈示するというのは、それによってクライエントを指導したりアドバイスしたりということではありません。クライエントに自問自答を促すきっかけとして、CDAが与える「解り易く噛み砕いた経験」が大切なのではないかということです。

―「自己概念の成長」とは
「自己概念の成長」をどのように考えているかということについて少しお話したいと思います。

自己概念 

クライエントに限らず誰しも日々「経験」をしながら人生を生きているわけです。人は日常生活の中から色々なことを考え、一生の内に実際に経験できる以上のことを認識することができるのではないでしょうか。なぜなら、日常生活の中での個別の具体的な経験だけではなく、人は経験したことがないものも理解したり、エッセンスを選択して取り入れているように思えるからです。つまり、その人を取り巻く日常生活がベースとなって「経験の場」(ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーは「生活知」と言っています)ができて、それをベースに直接経験したことがないものも認識したり推測したりしているのではないかと思うわけです。

先ほどCDAが与える経験が大切なのではないかと申し上げましたが、このような「経験の場」ということを考えたときに、CDAがクライエントの「経験」として入っていくということは、CDAがそのような役割を果たすことによって、クライエントの日常とそれ以上の何かとつなぐ役割があるのではないかと推測するわけです。サニー・ハンセンが言うところのチェンジエージェントかも知れません。

たとえば、今の社会が少子高齢化である、世界経済がグローバル化していると言っても、「少子高齢化」や「グローバル化」を何らかの介在(「解り易く噛み砕いた経験」としての呈示)がないと人はそれらを知識として概念的に理解出来たとしても、自分ごととして経験はできないのではないでしょうか。

「環境」には「一次環境」と「二次環境」があります。一次環境というのはもともとある環境で、二次環境というのはそこから派生した環境だとお考え頂ければいいと思います。たとえば、少子高齢化を一次環境とすると、二次環境はそこから派生して色々なものあると思います。日本の人口の25%以上が65 歳以上であるとか、年金の支給開始年齢が上がってくるとか、と言ったことが考えられるかもしれません。

そして、さらに「三次環境」といった場合には、その先にある個人に直接影響してくるもので、年金で言えば、自分が受け取れる年金額が減額になるなどです。個人が具体的に経験することが、先ほど申し上げた「経験の場」に相当します。そのような具体的な経験を通して人は、「日本の人口の25%以上が65 歳以上である」ことや「少子高齢化」を認識、経験することが出来るわけです。環境

少々飛躍して聞こえるかもしれませんが、CDAの役割のひとつとして、クライエントが、クライエントのおかれた環境を具体的な経験(生活知)を通して認識し、経験として取り込む橋渡しをすることがあるのではないかと考えます。そのような役割をCDAが果たせると、クライエントは日常生活より遠い所にある社会の動向を「経験の場」を通して取り込み、自己概念(「自分と自分を取り巻く世界をどのように捉えるか」)の成長につなげるのではないでしょうか。

「自己概念の成長」についてまた別の観点で考えてみたいと思います。キャリアカウンセリングで、私たちは何をしようとしているのでしょうか。もっと言えば、自己概念が成長すると何ができるのでしょうか。

私はCDAの専門性をひとことでいうと「つながり」や「共に生きる」だとこれまで何度かお話してきました。「つながり」と聞くと、一般的に「人と人のつながり」を連想される方が多いかもしれません。JCDAで考えているのはそのレベルのつながりだけではなくて、人が誰しも心の中で持っている「見たくない経験」や「見たくない自分」を統合していく、つなげていくということも含んでいます。心の中で自分が排除している部分と、その残りの部分、自分が認めている部分をつなげていくということです。見たくない、受け入れたくない自分自身とつながることで、受け入れがたい出来事や事柄とつながったり、受け入れがたい他者ともつながったりなど、実際の行動として表れてくるのではないかと考えています。これがキャリアカウンセリングでやろうとしていることの基本です。

つながりで言うと、「人と人」だけでなく、「会社と会社」「組織と組織」、もっと大きく言うと「国と国」のつながりも同様な考え方で展開していくことができるのではないかと思います。たとえば、ある国が大きな社会問題を国内で抱えていると、その国の他の国との関係の中に、その問題と関連した形の問題を他国との間で引き起こしているように見受けられます。他国に対する認識の仕方には、国内の問題が反映してつながっているわけです。つまり、ある個人が持っている問題が様々な階層を経て最終的に国の問題につながっていると言えるわけです。これは逆もいえるわけで、その国が抱えている問題がその国の個人に投影されているとも言えます。すべての個人は自己概念を持っているわけですが、そういう意味では組織や国もまた自己概念を持っているのではないでしょうか。

また、先ほどキャリアカウンセリングでその人がつながっていない部分、排除している部分をつなげて統合していくことだとお話しましたが、キャリアカウンセリングとは、個人の「つながり」を通して、「人と人」「人と組織」「人と国」「国と国」など様々なレベルでの「つながり」を作って影響を及ぼしていくことなのかもしれません。キャリアカウンセリングは政治ではないので、国や会社などに直接的に働きかけるということではありません。私たちCDAが働きかける対象は個人だと思います。自分たちの目の前にいる個人に働きかけることで、その先につなげていくことを意識していくのだろうと思います。  

【JCDA創立15周年記念特集(最終回)】経験代謝における自己概念の成長~2/2 …へ続く…

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