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JCDAジャーナル

2014年01月号 No.50

キャリア戦線アラカルト  さあ、共に更に行動しよう!~成熟した社会を目指して~

2016年12月15日 16:02 by jcda-journal
2016年12月15日 16:02 by jcda-journal

黒木 陽子

 

新たなる2014 年がスタートしました。今年JCDA は、創設15 年目を迎えます。立野理事長の年頭所感にもありましたが、キャリアカウンセリングが社会の中で更に機能していく1年にするために、私自身も日々の活動の中で考えていることをまとめてみたいと思います。


 JCDA スーパーバイザー・JCDA 理事
  黒木 陽子(会員番号CDA132090)  

●経験代謝
JCDA が2009 年に発表した経験代謝の概念は、キャリアカウンセリングとは何か?の問いに対しての応えであり、立野理事長が長年にわたり考えたことの結晶でもあります。そして、この概念があるからこそ、私達が何をすべきか様々なことが整理されてきたように思います。
JCDAでは、自己概念を「自分と自分を含む世界をどのように捉えているか」と定義づけています。自己概念を通して自分を観るように社会を観ており、それもまた一人ひとり違います。経験代謝は、その自己概念を観るプロセスを矢印で表し、経験にどんな自分が映っているのか・・・「経験をクライエントを映す鏡とする」ということを伝えています。

思えば、何か事を成し得た人や出来事を自分事として捉える人は、この矢印の動きを自分自身でやっているように思います。そういった方々は、挫折や苦労また日々の出来事までをも〝人ごと″にせず、〝自分ごと″として内省し(反省ではなく)、自問自答し、次の行動へつなげていきます。
そういう意味では、経験代謝は、人が"自分の人生を生きていく” という大事なプロセスを伝えているとも言えるのではないでしょうか。

それでは、なぜCDAという専門職が必要なのでしょうか?
私自身を含む多くの人は、起こった出来事を、経験として自分の中に取り入れ、自分を観ることが難しいものです。自分の枠組みの中で考えているからこそ、真剣に考えれば考えるほど行きづまりを感じてしまいます。そんな時、信頼できる他者としてCDA が問いを投げかけてくれることで、自分自身を見つめていくということが進んでいきます。しかも好意的関心を持って、共に絵を描くがごとく自分の経験を大切にしてくれるCDA と一緒だからこそ、その問いから自分の世界をしっかり観る勇気が出てきます。徐々にしっかりと自分と向き合うことができ始めます。

そして、自分を語る中で自己概念が明確になり、自分をつかむ感覚になります。自己概念が明確になると、自分の判断が自分らしくなり、その行動がその人らしくなり、自己一致した人生をおくることができるとも言えます。「意味の実現」です。
こういったことをシンプルに図の中に表現している経験代謝を学ぶ場として、昨年は多くの仲間とキャリア・カウンセリング・トレーニング(向上研修)や、各指導者研修、PF・PFA 研修で語り合いました。また、全国のCDA や夢カフェメンバーとも語ることが出来ました。有難いことです。

CDA が自分自身の経験代謝を動かし、自己概念を意識するために、JCDA では自己概念に名前をつけることを提案しています。これは名前をつけることが目的ではなく、意識化することが大事ということです。これをお読み頂いている方は、ご自身の自己概念に名前がついたでしょうか・・・?

●TVドラマ「半沢直樹」より
2013 年に大ヒットした「半沢直樹」の最終回視聴率は42%、一度も視聴率を落とすことなく支持され続けたといいます。「倍返しだ!」の言葉はブームとなり、日本全国あちこちの居酒屋や電車の中で、サラリーマン風の人々がこのドラマを熱く語る光景を目にしました。
父親のネジ工場の経営がゆきづまり、銀行からの融資も非情なる判断で途絶え、自ら命を絶った父親への強い思いから、その銀行員として自らの信念を貫く姿が印象的なドラマでした。

主人公である半沢直樹の自己概念は、一体何でしょうか? 許されるならば、〝問い″を出したい場面がいくつもありました。
想像しますと、恐らく「正義」「信頼」「愛情」・・・といった豊かなつながりが表現される言葉が浮かんできます。また、この自己概念の否定的表現は、ドラマを観るに「復讐」「打倒」「対立」・・のイメージではないでしょうか。ここで注目したいのは、「自己概念の否定的表現」と言っているので"よくないもの” と思われがちですがそうではないということです。このどちらも半沢直樹らしさであり、そのエネルギーの強さを感じます。

自己概念は、多面体のようなもので宝石のごとく輝いており、角度によってその色合いが変わるものではないかと思います。
場面によっては、私達は自己概念の否定的表現で行動化していきます。否定的表現での行動は、多くの場合" 不安” " 不満” " 苦しさ”" 辛さ” " 怒り” " 焦り" 孤独” ・・・といった感情が伴うのではないでしょうか。

ドラマ最終回では、半沢直樹がその昔父親の担当行員だった大和田常務の不正を暴き、役員会の中で土下座をさせました。右手の拳は、亡き父親が作ったネジと妻の花が作った二つのネジを強く握りしめ、開いたその手には血が滲んでいました。事を成し遂げた半沢直樹が茫然と脱力した姿で役員会議室を出ていくその後ろ姿が目に焼きついています。

このように、自己概念の否定的表現が際立つ場面で、果たして人は幸せを感じるものでしょうか…? 拳には、亡き父親とのつながり妻とのつながりを感じ、つまり自己概念が象徴されたもの持ちながら、否定的表現での行動をとっている時、果たして半沢直樹は、生きる幸せや豊かさを感じていたのでしょうか・・・?
巷で半沢直樹のストーリーが語られるのは、多くの場合は「倍返しだ!」に代表されるとおり、自己概念の否定的表現で行動している場面です。そこに人は何か共感を覚え、自分自身の人生と重ねて何かが語られます。
私達は、そのような社会・・・つまり自己概念の否定的表現で行動していることの多い社会を今生きているとも言えるのではないでしょうか・・・?

繰り返しますが、自己概念の否定的表現が悪いわけではありません。その行動に、" 生きる喜び” " 生きる希望” や" 生きる幸せ” " 生きる豊かさ” を感じとれるのかどうかということです。
そして、自己概念の否定的表現が表出された時ほど、チャンスとも言えます。自己概念をしっかり見つめるチャンスです。それには、" 問い” が必要です。
だからこそ、自己概念を意識するキャリアカウンセリングが今まさに必要であり、私達には広く社会に働きかける動きを創る専門職としての責任があるのだと思います。
気づいた人間から動いていく必要があります。それがキャリアカウンセラー・・・CDAなのではないでしょうか。

●「共創」のマイプロジェクト
私自身の自己概念の名前は、ここ2年で変化してきています。自己概念の名前を自分の中で吟味しながら、経験を通してこちらの方がピッタリではないか・・とだんだんと変わってきたのです。
「認める」「平等」「共に」「平和」「調和」「挑戦」「創造」・・・そして、今は「共創」という名前がついています。CDA の活動の中で、私自身もまた発達・成長・成熟している実感があります。「共創」・・・この名前の通り、今、自分なりに新しい局面をつながりの中で切り開こうとしています。

その1つは、経験代謝の考え方を一般の方々にも広げていけるのではないかという思いです。これを、企業内セミナーでも伝えはじめました。キャリアカウンセリングを伝えているというよりも、生きる姿勢として伝えることができないかというチャレンジです。企業内管理職研修で経験代謝を伝えている様子写真の企業内研修は、受講者から好評を頂き、また参加していた関連会社の人事部の方から本年夏の支店長研修のご要望まで頂戴し、確実に広がる実感を得ることができました。
また、自己概念が明確になれば、組織のチーム力が高まり活性化された職場が構築できるのではないかという思いで、昨年、ある資材問屋と顧問契約を結びました。その企業の某事業所(数名滞在)がチームとして機能しておらず、増収増益ではありますが危機感を感じた経営者からの相談で支援することになりました。月1~2回その事業所の中に入って個別に話をしたり、ミーティングに参加したりしていますが、メンバーの動きが変化しはじめ、よりよい方向に向かっている手ごたえを感じています。メンバーの自己概念が明確になるプロセスで、外にあった問題が〝自分ごと″になり、自分自身を見つめ、新たなつながりが生まれ始めました。

キャリアカウンセリングは、カウンセリングルームの中だけのものではありません。ありとあらゆるところで、経験代謝が応用できるのではないかと思います。概念がシンプルだからこそ、様々な場面で幅広く応用ができるのです。

私自身の現在の自己概念「共創」を行動に移す「意味の実現」のプロセスでは、湧きでるようなエネルギーを感じ、大変なことも多いですが喜びもまた格別なものがあります。毎日が喜びに満ちあふれています。
自分がこの地、宮崎に生まれ育ったことも、地元のみならず全国につながりを感じていることも・・・・大地にしっかりと根をおろし、一歩一歩すすんでいる実感があります。誰に向かって、何に向かって、この感謝の気持ちを伝えていけばよいものか・・・感謝の気持ちで一杯です。

2014 年、新たな1年がスタートしました。これをお読み頂いているご自身の自己概念、そしてそれを実現するプロセスの具体的な行動は何でしょうか・・・?
今年もCDA として、共に、更に、さあ行動を起こしましょう。

 黒木 陽子 プロフィール
 JCDAスーパーバイザー、JCDA理事。CDA養成講座担当講師。JCDA主催各種指導者養成研修講師。
民間企業で主に社員教育の仕事に携わり2000 年に独立の為退職。その後、精神科・心療内科で4年間心理カウンセラーとして勤務。現在、セミナー・講演・カウンセリングを全国で展開中。
(有)ライフ・サポートチーム 取締役社長 宮崎県宮崎市在住

特定非営利活動法人日本キャリア開発協会

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