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JCDAジャーナル

2016年大会特別版 第3号

偏差値教育とキャリア教育に関する考察

2016年08月18日 15:38 by jcda-journal
2016年08月18日 15:38 by jcda-journal
安藤 哲夫さん(東北支部)

andou1、早期キャリア教育の必要性
2014年 福島県のキャリアコンサルタント派遣事業で、県内全域の高校で就職セミナーの講師活動を行って気付いたこと。
戦後 偏差値教育が主流となっているが、その過程でキャリア教育的アプローチが、生徒・学生一人一人に届く形で行われていないのではないか・・と云うこと。
高校生の場合には、大多数の生徒たちは自分の進路を考える前に、偏差値によるランク付けの結果として存在すること、そして位置付けられた今を基点にして、何を選択出来るかを迫られている。方向性を確認出来ない就職は、早期退職に繋がる。
大学生の場合は、偏差値プラス受験戦争に勝ち大学に進学。そして就職の段階で起点となるのは○○大学○○学部の学生としての現在の自分。その自分を基点としての就職活動。受け入れる企業は、偏差値の高い学校から、優秀な学生を選びたい。自分の特性・向き不向きを考えながら選んできた進路なら、何の心配もないが、就活の段階で自分探しを始めるのでは遅い。
キャリア相談は個人ときちんと向き合わなければならない。先生の役割として、全体のレベルを上げること、そして評価を偏差値重視で行うとすれば、学校の先生には生徒一人一人に向き合うことは、物理的に不可能。
ここにキャリア教育を、小学校何年生から始めるのが良いのか、児童心理学的検討が必要。義務教育終了時点で、次の進路を考えるとき、方向性を本人・保護者・先生三者共通の認識として検討する必要があるのではないか?
偏差値も重要な指標とは思うが、同時に方向性を探ることも同時進行で進めたい、それにはキャリアカウンセラーの参加が必要となる。
以下自分の場合・子供たちの場合の学校でのキャリア教育的アプローチはどうだったのか考えてみたい。

2、自分の場合
私は、子供の頃から人見知りが激しく・引っ込み思案、自分には人を相手にする仕事・人と一緒になってやる仕事は出来ないだろうと考えていた。考えたのは離れ小島での気象観測の仕事か人里離れた岬の突端にある灯台守りの仕事。母親に話したら「家族はどうするの?」と言われた。高校時代勉強が手につかない時期があって成績はどんどん落ち希望の大学には進めなかった。この学校教育の期間(小学校~大学)にキャリア教育的な科目が存在した記憶はない。既に偏差値教育のシステムの渦中にあって、範囲は偏差値ランクの枠の中からの選択しかなかった。
就職の段階で、大学に来ている会社の中から「気象測器」製造会社を選んだ。
「何時つぶれるかわからんような会社に・・・」と心配する父親と喧嘩して入社した。子供の頃から望んでいた「気象」に直結した仕事は楽しく、受験時代からのモンモンとした気分はなくなっていた。在職11年で会社倒産。(この過程で本を一冊書けそうな体験・今日の自分の精神的キャリア形成の土台となった時代)。既に家族を持っていたので、いわきに戻ってきて再就職活動。
気象に繋がる仕事はなかったので、自分に出来る仕事を探す。大手電機メーカーの下請け会社に入る。4年在職で人員削減理由のリストラ対象となる。次に大手電機メーカー数社の下請け的、電器部品メーカーに入る。ここに8年在職して自己都合退社。
今までの電気関連機器製造会社での技術者としてのキャリアーを捨て、全くの異業種・生命保険の営業マンとなる。
子供の頃思っていた「人を相手にする仕事は出来ない・・」の真反対の仕事についた。損害保険の代理店も手掛けた。ファイナンシャルプランナーの資格を得その活動の中でキャリアーカウンセラーの資格取得を薦められた。
資格取得の過程で、自分のキャリア全てを活かせる分野・・・と感じて、ライフワークとするに至った。

3、子供達の場合
息子三人。三人共にキャリア教育的なアプローチ・育て方はしていない。
自分がキャリアカウンセラー資格を得た時にもっと相談相手になってやるべきだった・・・と思った。
長男は高校受験の時、「どこの高校に行ったら良いか・・・・?」と聞いてきたので、「近い所がいいだろう・・・」と答えた。結果歩いて通える地元では難関進学校に決めた。
本人の偏差値ではやや無理と判断した先生から、三者面談で「お父さんのお考えは?」と聞いてきたので、「本人にまかせます」と答えた。長男は頑張って合格した。
入学はできたが今度は進学校での偏差値では大学進学レベルを維持出来ず、3年の春担任の先生から呼び出され、「息子さんだけが、大学進学の希望を出していないのですが・・」と言われる。ここでも私は「本人に任せる・・・」と長男と向き合うことを避けてしまった。結果、本人は東京の情報処理の専門学校を選んだ。情報関連の仕事に就くのかと思ったら、専門学校に通いながらアルバイトをして貯まった金で、アニメ専門学校に入り直して、アニメ製作会社に就職した。
二男は高校生になってもマンガばかり読んでいる兄貴を見て、軽い気持ちで同じ高校に進学。偏差値に見合った都内の国立大学に進んだ。就活ではゲーム機器メーカー大手で圧迫面接に腹を立て、試験官に「貴方もそのことが出来ているのですか?」と逆質問をして不合格となる。大学教官の指導を受けて学究の道に進んだ。
三男は兄二人が行けたんだから・・・・と当然のように同じ高校に進んだ。2年生になる時 理系・文系どちらかに決めろと先生に言われ、「決められない、数学も好きだ国語も好きだ・・・」と母親に泣いて訴えていた。結局大学は経営学科を選び、証券会社に就職した。
三人の進路決定の過程を見ると、初めに「偏差値」に基づいた進学があり、進学先での偏差値によって次の方向を決めている。三男は進学時、「よその親はもっと子供のことに干渉してくるらしい。うちの親は何でうるさく言ってこないのだ・・?」と言ってきたことがあった。その時は「お前たちを信用しているからだ・・・」と答えていたが、「干渉」とは「進路」への心配だとするならば、私は「自分で選ぶだろう・・」と放任していたことになる。三人とも偏差値ランクから進路・次の学校を選択しているが、将来どんな仕事を目指すのかと親も聞かなかったし、先生からも聞かれなかった。キャリアカウンセラーの資格を得た今、子供たちにもっと「干渉」すべきだったと思う。

4、考察
この原稿を書くに当たり、現状・小中学校でのキャリア教育はどうなっているのか?
中学校の校長を退職した人にレクチャーを申し入れたが、「原稿を書く参考に・・・」と一言付け加えたことで警戒されたのか(?)「忙しいので・・」とお会い出来なかった。
そこで上記、自分の場合・子供の場合を振り返って、「学校教育でのキャリア教育的アプローチ」はどうだったか・・・を探ってみた。私は今福島県の「ハローワーク再就職セミナー」のアシスタントの役割を引き受けている(いわき地区にて)。
再就職を目指す老若男女が受講している。セミナーの過程で「自分のキャリアを振り返り自分の強みを見つけ出し自己PRの履歴書・職務経歴書を書く」ワークタイムを設けている。殆どの受講者がこの作業に苦戦している。学校教育の中でも前の会社に就職する時にも「自分の強みなんて考えた事がない」。
自分の場合・子供たちの場合そして再就職を目指す人達、共通して言えることは、「キャリア教育」はどういう形で受けていたのか思い出せないでいる。現在の大学生は就活の時点で「エントリーシート」を書くに当たり 何らかのセミナーを学内・学外で受けている。それでも「自分の強みを見つけている今は」幾つもの偏差値を積み重ねてきた「今」の自分を振り返ってみている・・・?偏差値に応じた大学に進学し、いざ就職の段階で偏差値の高い企業に就職したいと思って活動しているのが実情。偏差値・偏差値で進路選択をしてきたが、その過程で自分の特性・向き不向きはどこまで分析出来ているか?いざ自己PRを求められた時、自分の強みをどう表現できるか。エントリーシートで面接で。多分、偏差値の積み重ねだけでは、企業が求める人材に自分を当てはめるのは、かなり難しいと思われる。偏差値の高い企業が求める人材は、偏差値の高さプラス特性であったり向きであったり創造性であったり
でも この時点では遅すぎる。高度の教育を受けた後に方向性の修正は勿体ない。

自分の特性・向き不向き・自分の強みを見つけなければならないのは、何らかの「選択」の時。その「選択」を早期に迫られる人たちには早期のキャリア教育が必要。進学か就職かにかかわらず、方向性確認は早い方が良い。
・・かと言って、保護者・先生・カウンセラーがひっぱり回すような「キャリア教育」であってはいけない。
児童心理学者:教育学者が話し合い「いつから始めるか・・・」検討して頂きたいと思います。

本人の特性・向き不向きを一番良く知っているのは、生まれた時から見ている親、そして学校に行くようになれば先生。学校の社会科見学も「建物」だけを見に行くのではなく「働いている人たち」をも見に行くようにすれば、仕事とはどんなものか理解する・・・・・等、キャリア教育的観点から親から子への接しかた・学校教育での工夫が生まれると思います。方向性がつかめたら、どんな仕事があるのか・役割があるのか、親子で一緒に考えることが出来る。
親子の対話が増えることにより、子供の悩みを知ることが出来る。イジメもなくなる。

話は変わるが、前々政権時代「勝ち組:負け組」「自己責任」 そして現政権では「一億総活躍時代」、前者後者ではニュアンスは異なるが 偏差値教育の結果或いは偏差値教育継承でのスローガンならば頂けない思いです。
キャリア教育をしてそこでの選択の結果なら「自己責任」と言える。偏差値教育を積み重ねてきた結果、今の「格差社会」が育った。教育行政の「政府責任」を修正して頂きたい。

以上、考察と致します。

プロフィール
筆者 安藤 哲夫  
活動場所 福島県
活動領域 一般求職者支援
活動歴 ①平成17年6月~平成18年3月
福島県就職サポートセンター(いわき)でキャリアカウンセラー・相談員
②平成18年4月~平成19年3月
福島県就職サポートセンター(郡山)でキャリアカウンセラー・相談員(高速バス通勤)
③平成19年より 福島労働局主催 「ハローワーク再就職セミナー」 アシスタント業務
④平成21年5月より いわき市勿来勤労青少年ホームにて キャリア相談業務(ボランティア)
その他 ①平成19年4月~平成22年  県内高校にて進路セミナー講師
②毎年2月 いわき市勿来勤労青少年ホームにて 高校生新規就職研修会・講師
③自分は 会社を辞めるパターン三つを全て経験している。会社倒産・リストラそして自己都合退職。 
④キャリアカウンセラーをライフワークとしている。

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