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JCDAジャーナル

2016年1月号 No.58

社員も組織も生き生き~企業内キャリアカウンセリングの現場から~

2016年03月25日 13:22 by jcda-journal

今回は、株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)にて、企業カウンセラーとして活躍されている本庄愛倫さんにインタビューさせていただきました。富士通SSLでは社員一人一人が「自分らしさ」を発見し、個性と能力を十分に発揮することができるキャリア形成支援を目的とし、さまざまな取り組みを実践されています。その取り組み内容や会社組織として機能するための工夫、企業カウンセラーとして心掛けていることをうかがいました。

本庄 愛倫  ―どのようなきっかけで、キャリアカウンセラーを取得されましたか?

 新人教育のインストラクターとしては長く関わってきていましたが、2005 年の新人教育の実施前に上司が入院し、幹部職不在の中で初めて新人教育の統括の役割を担うことになりました。入社してきた社員のスキル向上や学生から社会人への動機づけだけではなく、健康状態や人間関係などに、広く関わる経験をしました。その際に、受講者から出てくる相談や自分自身から湧き上がる疑問に対して、経験だけでは導き出せないことが多く、自信をもって支援をすることができずこれでいいのか…と悩みました。また、統括としてインストラクターを取りまとめるにあたり、経験だけではよりどころがなく、みんなが同じ方向を向くには、理論など根拠となる何かが必要だと感じたのがきっかけです。

―勤務されている企業と従業員数、現在の担当業務について教えてください。

情報システムやソフトウェアの研究・開発、情報処理に関するコンサルテーションを行う企業に勤めています。従業員数は約1,200 名です。
キャリア開発部にて、担当社内教育の企画・運営、おもにキャリア開発と組織開発を担当しています。また、課長として部門内のマネジメントを行うとともに、企業内キャリアカウンセラーとして、社員一人一人のキャリア形成支援と組織のキャリア開発に携わっています。

―御社でのキャリア開発に関する取り組みについて教えてください。

2007 年12 月にキャリアデザインサポート室が設立され、キャリア研修の企画やキャリアカウンセリングを実施しています。キャリア研修は、新入社員、10 年目、40 代、50 代、幹部職向けで実施しています。また、キャリア構築には健康維持も大事ということで、メンタルヘルス研修(40 代セルフケア、幹部職のラインケア)とマネープラン研修(30 代、40 代後半)も並行して実施しています。 キャリア研修については、8 年をかけてほぼ全員に研修を実施することができました。会社の制度としては、年に1 回の上司との「キャリア面談」があります。それとは別に、社内のキャリアカウンセラーが実施する必須面談と希望面談があります。

①若手社員面談(3 年目、4 年目)、11 年目社員・45 歳キャリアフォロー面談を必須で実施しています。
②前年度のキャリア研修の受講者を対象に、キャリアフォロー面談の希望を募り実施しています

 必須面談(①)においては、現在の業務のほか、これまでの経験、職場環境、健康状態、ライフを含めた今後の想いなどを伺います。その中から、成長実感の有無、現在のモチベーション、ロールモデルの有無、問題解決したいことなど、ご自身の気づきを促すように話題をふります。最終的には、ご自身で「CAN(保有スキル、得意なこと、教えられること、専門分野)」、「MUST(周囲からの期待、自分自身の課題)」、「WANT(希望、取り組みたいこと、やりたいことの方向)」を書きだしてもらいます。
CAN・MUST・WANT のイメージの大きさも聞きます。実際の量の大きさや気持ちの大きさなどをイメージしてもらいます。MUST が大きいと負担がありモチベーションが落ちていると思いがちですが、実際にどのような状態なのかを伺うと「期待してもらっているという意味で、やらなければならないことが明確なのは自分のモチベーションが上がる」という人がいます。自分の良い状態と落ち込んだ状態を円の大きさで示してもらうときもあります。(以下、抜粋) 円の大きさの話をしている段階で、MUSTとCAN の交わり具合から自分の課題を思い出す方もいらっしゃるのが、興味深いです(CANT とWANT の交わりで思い出す方もいたり、人それぞれですけど。視覚化は大事ですね)。

CAN/MUST/WANTのイメージ

―WILL・CAN・MUST というのはよく聞きますが、御社では「WILL」ではなく「WANT」を使っている理由を教えてください。

 「WILL」だと次に進めていく意味合いが強く、「MUST」との違いを出しづらいため、「心からほんとうにやりたいこと」「欲していること」として、今後の方向性として聞いています。「WANT」も重要ですが、会社でのカウンセリングなので、周囲からの期待(MUST)を確認するところが大事だと考えております。また、必須面談(①)で実施するCAN・MUST・WANT は、面談者の開示了承を得て、担当幹部職への報告をしています。

 ―CAN・MUST・WANT はどのように報告されていますか?また、担当幹部職に報告した際、担当幹部職からはどのような反応がありますか?

CAN・MUST・WANT の事実のみを報告します。カウンセラーの見立てを話すことはありますが、その場合は、幹部職にヒアリングする形で確認しているような感じです。報告の際は、「MUST」が一致しているかを確認します。MUST の部分において、本人の認識が足りていないようであれば、「もう少しはっきりと上司から本人に伝えては」とアドバイスすることもあります。幹部職が気にするのはWANT のところですね。全てが叶えられるわけではないのですが、仕事で負荷がかかっているがどう感じているのだろうか?というように気にかけていて、そんな状況から「こういう風にしていきたい」とスキルアップに関することが書かれていると上司としても嬉しいようです。

―今までのお話を伺うと、キャリアカウンセリングが組織の一機能として定着しているように感じますが、部署設立の当初からでしょうか?また、定着するための工夫があれば教えてください。

そうですねぇ…。最初は「なんだろう、ここの部署」「キャリアデザインサポートって?」という感じでした(設立当初の部署名は「キャリアデザインサポート室」)。IT 業界で、「キャリア」というと「通信」を意味するので、「ややこしいんだよ」って言われたり(笑)、「面談で上司が悪口を言われているのではないか?」や「いろんな情報をもっているのではないか?」と誤解を受けたりもしました。
必須の面談をやっていく中で少しずつ定着していったように感じます。若手社員から始めたのがよかったのかもしれません。若手は面談で呼ばれることに抵抗が少ないですから。若手社員と面談をするようになり、むやみに辞める人がいなくなり、定着率が上がったという効果がありました。また、必須面談を実施することで、最初は「今日は何の話をさせられるのだろう?」と思うようですが、1 度でも来談していると次に相談が来やすくなるようです。気軽に来ていただいた方が早期の問題解決につながり、気分も楽になったりします。本当に深いキャリアの相談で来る方もいますが、「ちょっと相談したいです」「自分の頭の中の整理をしたい」という方もだんだん増えてきました。必須面談の中の限られた情報についてはそのほかにも、守秘義務を遵守しながらも面談内容をデータ化し傾向をまとめて経営側に報告し、開かれたキャリアカウンセリングを実践しています。

―キャリアに関する面談の実施から8 年経過して、どのような効果があったと感じていますか?

社員の自律促進になっていると感じています。それを実感しているのは、直属幹部職、ライン部長あたりだと思われます。「面談」の効果を感じている幹部職は多くいます。本部長が「外勤者全員面談」を実施したり、部門内幹部職が課の異なる部下の「クロス面談」を行ったり、制度の年1 回の面談だけではなく、3 ヵ月に1 度、部下面談をしている課長もいます。社員の自律促進の手段の一つとして「面談」を利用するのをよく見るようになりました。今年の11 年目の必須面談(若手のうちに1 回以上は面談の経験がある)では、こちらがそんなに質問をしなくても自分でCAN・MUST・WANT を使って振り返りをしてくれました。
若手社員とのカウンセリングの様子

 若手社員とのカウンセリングの様子。
自らの課題に対する主体的な考えと行動を尊重することを基本に実践しています。


―そういう方は仕事のパフォーマンスもいいのでしょうか?

 パフォーマンスがよいと感じています。もちろんパフォーマンスとは別のところで悩みはあるのでしょうが、仕事は、日々、問題解決の繰り返しなので、内省ができるのは問題解決の力につながると思います。ただ、内省ができてもモチベーションとは別なので一概には言えませんが…。

―企業内カウンセラーとして心掛けていることを教えてください。

①カウンセラー倫理規定の遵守
倫理規定は面談ルームに設置し面談前には説明するルールにしています。「守秘義務」「自律支援」など社内だからこそ、信頼関係が大切です。とくに「守秘義務」のところです。例えば面談中に、家族の話、病気の話、結婚や離婚などプライベートな話も出てくることがありますが、担当幹部職に話はしません。
②関係者からの個別情報収集(健康安全対策ミーティング、社内イベント、発表会などへの参加など)
さまざまなミーティングやイベント、発表会に参加しプロジェクトの状況を聞いて情報収集をしています。すぐに何かにつながるわけではないのですが、知らないよりは知っていた方がいいこともあると思っています。それが何かのヒントになり、問題の早期解決につながることもあるのではないかと考えています。
③カウンセリングスキルの向上
これはどんなに鍛錬しても尽きないですね。自分のクセがでて悩むこともあり、うまくいかなかったカウンセリングの後などは、スーパービジョンを受けます。スーパーバイザーだけではなく、同僚のキャリアコンサルタントとも話をします。また、年2 回くらい「キャリア研究会」を会社で主催し、社内・社外を含め傾聴の練習会などをしています。さまざまな方とお会いし、「ここすごいな」というのを目の前で見ると刺激になります。

 ―今後のお仕事の展望についてお聞かせいただけますか?

「社員も組織も生き生き」を方針として推進してきました。キャリアビジョンを考え"自律”を促進するキャリア研修(2 日間)は、全ての階層での実施が完了しました。受講率96%となりましたので、これから、第2 ステップの施策を考えたいです。具体的には、世代ごとのキャリアの発達課題に応じた対応や、面談を未実施の階層への面談実施や、幹部社員の面談スキルの向上支援などを考えています。日ごろの面談は上司と実施したほうが、問題を早く解決できますので、幹部職の面談スキルの向上は重要かと思っています。他にも、キャリアカウンセリングを学ぶ中で性格検査の勉強もしているので、それを活用してチームビルディングに関わっていきたいとも考えています。また、企業内キャリアカウンセラーの効果も、まとめたいと思っています。今の活動の事例はまとめていますが、どんな効果をもたらしているのか、もう少し分析してもよいかと思っています。外部カウンセラーや講師からのフィードバックや自分の経験からも、社員にキャリアの考え方が浸透している実感はあるので、それがどのような効果があるかを分析しようと考えています。

-ありがとうございました。

<取材を終えて>
今回の取材は、富士通SSL 様の面談ルームをお借りして取材させていただきました。「制度」、「カウンセラー」、「面談ルーム」など、キャリアカウンセリングに必要な要素が整っているお話をうかがい、「いいなぁ 羨ましいなぁ」というのが正直な感想でした。(私も企業内カウンセラーなので…)
しかし、お話をうかがっていく中で、最初からキャリアカウンセリングが受け入れられていたわけではないことや、常に工夫し、進め方を柔軟に変更してきた経緯をうかがい「最初から何でもうまくいくわけではない」ということを感じました。
企業内でのキャリアカウンセリングは、これからますます重要性も必要性も高まってくると思いますが、実際に導入しようとすると多くの困難があります。そのような状況でも、社員も組織も大切にし、一歩一歩進めていくことが重要なのだと気づいた貴重な一日となりました。
取材にご協力いただきました本庄様はじめ富士通SSL 関係者のみなさまには、この場を借りて御礼申し上げます。

聴き手:JCDA 広報ボランティア 伊名岡

株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ ビジネスマネジメント本部
キャリア開発部
<従業員数>1,168 名(2015 年3 月時点)
<体制>スーパーバイザー1 名+キャリアカウンセラー(4 名)+外部カウンセラー(依頼時のみ)
<実績>キャリア研修:1,230 名受講(延べ)、メンタルヘルス研修:1,225 名受講、マネー研修:380 名受講、希望・必須面談:年間500 ~700 件
※ 地方の事業所は、カウンセラーが現地へ出張し面談を実施
<キャリアデザインサポート活動の方針>
社員一人一人が「自分らしさ」を発見し、個性と能力を十分に発揮することができるキャリア形成支援を目的に、適切な対応・アドバイス・情報発信を行う。
「人財」の育成と活用ができる強い企業基盤を醸成するために、社員のヤル気・モチベーションの維持・向上/チャレンジできる組織のキャリア開発支援と環境の調整を行う。


 本庄 愛倫 プロフィール
東京生まれ、2 児(高校生と大学生の息子)の母
1987 年に富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ入社、約6年のSE 経験を経て、人材開発部門へ異動。新人教育インストラクター、社内教育の企画・運営を経験。
2008 年にCDA 資格を取得
2011 年に2 級キャリア・コンサルティング技能士を取得
2009 年よりキャリア支援業務に従事、キャリアビジョン、マネープラン、メンタルヘルスなどライフを含めたキャリア支援研修を企画、社員・幹部職に対する個別面談を通し、ライフを含めた個人のキャリア形成支援と幹部職支援を通して組織のキャリア開発を実施。

NPO法人日本キャリア開発協会

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