「シングルマザー」と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
- 貧困の代名詞
- 子育てに手が行き届かない
- 家庭生活不全
しかしここでお伝えしたいのは、どちらかというとそのようなステレオタイプで作り上げられたシングルマザー像ではなく、実際に私の目の前に来て悩みながら試行錯誤しながら、自らの道を自分で切り開いていく強い女性・強い母のお話です。
そうは言っても、ほぼ全員が最初から強い女性だったわけでは決してありません。様々な理由で離婚を決意したり、望む望まざるにかかわらず離婚を選択せざるをえなかった方も多くいらっしゃいます。そこから、女性は変わり始めます。泣いているだけの時を経て少しずつ進み始め、何よりも子供の幸せのために強さと優しさを武器に、人生を選択し歩んで行かれるのです。
現在、私自身もシングルマザーになって20年経ち、4人の子育てもほぼ一段落しました。CDAの資格取得から約7年になります。只々、安定した生活を送るために働き続けてきて、気が付いたら40歳を超えていました。
「このままで大丈夫だろうか」誰でもが感じたことがあるはずの、一抹の不安が頭をよぎったことが資格取得の動機の1つでもありました。
正直に言うとCDA資格を取得した後のキャリアビジョンなど考えたこともない私に、先輩CDAがこう聞きました。
「山木さんは、誰を支援したいと思ってCDAを取ったの?」
答えられるはずもありません。衝撃でした。行政機関の窓口で来所者の対応をする私にはCDAが自分で支援対象者を決めることができるなんて、思ってもみなかったからです。
一次試験のために勉強したCDAの12の能力には「固有なニーズを持つ人々への対応スキル」とあったことも蘇ってきました。そこから、「誰のために?」を私は探し始めたのです。
そして、3年前にたどり着いたのが「シングルマザー支援」
一般社団法人日本シングルマザー支援協会との出会いです。
自分が当事者であることが、役に立つのかもしれない。また、当事者であることが弱点になるかもしれない。様々なことが頭をよぎりましたが、シングルマザーにとって働くことは必要不可欠の要素であることは自明の理。情報の取捨選択や決断を自分だけの力だけですることが難しい方が少なくありません。そのお手伝いならできるはずと思い、キャリア支援に携わるようになりました。
2.協会の活動~ハッピーチェンジプロジェクト~
シングルマザーのキャリア支援は、「自信の回復」から始まります。
1人で子供を育てる決意をするまでに、様々な困難にぶつかっていることが多くあります。調停や裁判、相手からの誹謗中傷、周りの無理解などで「自信」や「自己肯定感」がどんどん失われていく体験をしています。
また、今までの人生の中で職業体験や社会経験が少ない方も、一定数いらっしゃいます。そのような方に寄り添い、自立までの道のりを伴走する支援団体や行政機関は多くありません。しかし、そのような支援を求めるシングルマザーが多いことも事実です。
そのような支援のミスマッチに終止符を打ちたいと、一般社団法人日本シングルマザー支援協会(横浜市:代表理事 江成道子)(以下、支援協会)は、平成25年7月に設立され、現在会員数1450名(6月時点)協賛企業100社(同)の支援団体となり、日々成長を続けています。
支援協会のコンセプトは「少し元気なシングルマザーが、まだ元気になりきれていないシングルマザーの手をひこう」当事者同士だからできることを、社会的弱者としての支援だけでなく「本当の意味の自立」へ導くための活動を行っています。
「ハッピーチェンジプロジェクト~年収300万円への道~」
これは、25年12月から支援協会にて毎月開催しているセミナーのタイトルです。
シングルマザーの就業率は80%を超えているにも関わらず、その平均年収は180万円以下です。この金額でどうやって子供を成人まで育てていくのでしょうか?不安にならないほうがおかしいと思いませんか?
そんな不安を解消し、キャリアアップやキャリアチェンジを図るための、第一歩を踏み出せるようになってほしいとの想いから開発したセミナーです。
「自信の回復」を図るため、現状や自分自身の考え・選択を無条件で肯定してもらえる体験を提供できるような構成となっています。
就業率が高いとはいえ、パートや派遣などの非正規雇用が57%程度であるシングルマザーには、まずは仕事とは?働くとは?人生とは!を考えるために、キャリア理論の「スーパーの理論」からライフロールとライフステージという概念を感じて頂きます。
そして、同じくスーパーの「14の労働価値」を基にしたワークで、現在の仕事で感じている労働価値と、自分自身が本来求めている理想の労働価値を比較してみます。その答えをお互いにシェアしながら、グループカウンセリングの手法を用い各自の不安や価値観に気付きを与えられるよう支援します。
シングルマザー同志という場の空気も手伝ってか、自分の経験を語りだす受講者が多く、その影響を受けた他の受講者も自分の経験と照らし合わせて語りだします。ここでは、自然と違和感なく経験代謝が機能しており、カウンセラーの手を借りることなく自発的な気づきを与えあえる環境になっていきます。
人生の幅と長さを感じ、自分の価値観を改めて考えていただくのです。そして、自分自身と子どもの未来のために必要なものを考える時間になります。
シングルマザーに限らず、子供のいる女性は子供の年齢がキャリアの転換期や目標設定になりやすい傾向があります。そのため、過去と未来を「点」ではなく「線」でとらえて子どもと自分の未来ビジョンを考えるワークを、ファイナンシャルプランナーが続いて行います。前半に理想の労働価値を考えているため、未来の目標や到達地点がクリアに見えたり感じたりできるようです。
このセミナーの受講者は、現在までに延べ80名を越えています。
セミナー受講3ヶ月~6か月後のアンケート調査結果で、セミナーに対する満足度が非常に高く、受講者の約93%が「セミナー受講後、自分自身に何かしらの変化が起こった」と感じていると回答しています。
受講者の具体的感想には、「どうしても自分一人ではマイナスに考えてしまって悶々としていたことも、皆に共感してもらえることで気持ちが楽になりました」
「現状に対する不満・不安と将来に対する不安を抱えて参加した結果、その原因に気付き、対処方法がほんの少しだけ見え隠れするところまで自分を引き上げられたのは良かった」
「みんな辛い経験をされた中でもがいて、でも前向きに進もうとしています。私だけじゃない!仲間がいると思えて、前向きになれます」
をはじめとした多くの感想が寄せられています。
このように、共感してもらうことや仲間がいることに気付く、小さなきっかけからシングルマザーのキャリアは好転していきます。
このセミナー受講後、支援協会の職業紹介事業に積極的に応募し新たな職業に就かれた方や、起業を目指し学び始めた方も多くいらっしゃいます。仕事だけではなく子育てに関しても、気持ちに余裕や自信が持てることで、子供との関係が改善されたと感じている受講生も多くなっています。
この「ハッピーチェンジプロジェクト」にはセカンドステップもあり、ここでは「人生すごろく~金の糸」を利用した経験代謝を促進して自分自身を見つめ直すセミナーも開催しています。これも大変好評で、受講者の前に進む力になっているようです。
3.他の活動と、支援協会のこれから
現在、政府の施策の中でも中心的な「女性活躍推進」と「地方創生」ですが、この対象としてシングルマザーに対するニーズが高まっています。
地方移住や地域活性化、テレワークを使った在宅勤務の推進、地方自治体が推進する婚活イベントなどにも、シングルマザーへのオファーが支援協会に多く集まってきているのです。地方移住のための説明会やセミナーなどを、地方公共団体と協働して開催しています。また、様々な企業様からも、シングルマザーを雇用したいとの声もいただいています。
「シングルマザーだから採用されない」「地方に住んでいるから仕事がない」
そう思っているシングルマザーが多い事も事実です。そのような方々に正しい情報を正しく伝えるための面接会や説明会、経営者様との食事会など今までと違った形のマッチングイベントも開催しています。
シングルマザーが子育てをしながらも働きやすく、自立した生活が送れるような仕事や生き方ができるようになることが支援協会の目標です。
そのような社会が実現したとき、全ての女性や男性、そして若者が本当の意味でのワークライフバランスを叶え、働きやすく自立した生活が送れるようになると信じています。その第一歩として、シングルマザーの支援から始めること。それがキャリア支援に携わるCDAとしての私の使命と考え、これからも日々精進してまいります。
今回このような機会をいただき、支援協会の活動を紹介させていただくことができました。JCDAの皆様及び東京大会運営委員の皆様に末筆ながら感謝申し上げます。また、支援協会の活動に賛同しいつも応援してくださり、今回の推薦をしてくださった、中村智子様にも感謝いたします。
プロフィール筆者 | 山木 三千代 |
活動場所 | 横浜、東京、多摩地区 |
活動領域 | 就職支援及び求人開拓 |
活動歴 | 2009年より八王子公共職業安定所にて就職支援ナビゲーターとして勤務。 その傍ら、一般社団法人 日本シングルマザー支援協会Rにて専任キャリアカウンセラーとして就職支援及び求人開拓に従事 |
コメント | 2回の離婚で授かった4人の子どもを育てるため、何のスキルもないままがむしゃらに働き続けていましたが、一念発起してCDA資格を取得したのが2009年。それから7年。一貫して就職支援に携わってきました。そのスキルと経験を、シングルマザーの生活を安定させるために注いでいます。多くのシングルマザーが、子育てしながら働きやすい社会になるための活動を継続中です。 |
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